岐阜県各務原市の市営斎場である.
雲のような,
ゲゲゲの鬼太郎に出てくる妖怪“一反木綿”のような,
軽やかにうねる白い3次元曲面の屋根がなにより印象的な建築である.
隣接して設けられた蓮池越しにこの建築を見ると,
水面の揺らぎや反射もあって.その浮遊感は一層強まって見える.

RC造で作られた屋根と一体化する柱には,雨水を流す竪樋が仕込まれている.
抽象的な建築の背後には,驚異的な施工技術が垣間見える.
その屋根と床の間にはめられたガラスも最小限の納まりで,
建築のコンセプトを明快にする透明感をもたらしている.
前衛的な建築家である伊東氏の作品の中でも特に尖ったもので,
間違いなく代表作と言える.

しかし,この建築の優れるところは,そうした表現にまつわる精度の高さに限らない.
平面計画の秀逸さは特筆すべきものである.
エントランスホールの正面に静謐な告別室.
告別室を抜けた先に,天井が高く,シェルの柔らかな曲面が光を柔らかに拡散させる優しい印象の炉前ホール.
そこから極楽浄土を表現する蓮池に向かって抜けると,ぱっと明るい待ち合いロビーと遺族の為の待合室が蓮池に沿って配置されている.
火葬の過程で,同じ道を引き返すことがなく,故人との別れが穏やかなものであるようよく考えられた計画となっている.
私は各務原市の人間であり,20代半ばに父を亡くしている.
父の火葬はここで行った.
その経験を踏まえて言うならば,
これは,そうではない火葬場と比べると明らかに自然なことに感じられる.

また,細かなことであるが,
床と壁を曲面でつなぎ,入隅を無くしているのも非常に効果的であると感じた.
この操作により,この建築は施設然としたものではない空間の質を獲得している.
緩やかにうねる屋根の下にできる内部空間は,どこまでも穏やかで,どこか非現実的な柔らかい雰囲気を持つ.
建築意匠と平面計画が相まって,別れの場として相応しい癒しの建築となっているのである.
この優れた建築の力に感謝している.

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