Kiasma/Steven Holl

ヘルシンキ中央駅の徒歩圏内,大通りに面して緩やかなカーブを描いて佇むアイコニックな建築は,メカニカルでありながら有機的な独特の外観.
市街地側から見るのと,公園側から見るのでも随分印象が変わります.
アメリカの建築家スティーブン・ホールの代表作で1998年の竣工です.

エントラスは重厚な鉄扉で,ここから入って良いのか…?
一瞬戸惑います.
複雑なパッチワークのような建具はスティーブン・ホールのお家芸.
ギャラリーなどではなく,このスケールの美術館でもやって来るのかと意外性もありました.
格好良いですね.

エントランス

中にはいるとまるで渓谷の谷底にいるかのような空間に圧倒されます.

頭上には巨大な乳白色のガラス天井.
自然光が落ちて来ます.

柔らかい陰影と緩やかにカーブを描くスロープが奥へと人を誘うかのようです.
足を進めると,何が起こるのか予想もできません.
ワクワクします.


質感の強い杉板型枠のコンクリートの壁を白く塗りつぶし,素材の荒々しさと抽象性が絶妙なバランス感で存在します.
黒い床も空間を引き締めており,地面のような力強さ.

入って右手にチケットを購入できるカウンターとロッカー,左手にミュージアムショップとカフェ.
鮮やかな色使いでアクセントになっています.

スロープを歩く瞬間はドラマティックで高揚感があります.


複雑な空間が少しずつ姿を見せてきます.
振り向くとまるで自然の地形のような迫力が感じられます.
壁を這うように滑り込む光のグラデーションが美しい.


スロープを上るとダイナミックに階段が宙を舞う階段室に出ます.
そこで折り返すと展示室です.
展示室の扉が真鍮製の重厚感のあるもので驚きました.

吹き抜けを挟んで両側に計画された展示室をぐるぐる回りながら,上階に上っていく動線計画になっています.

展示室と吹き抜け空間を出入りしながら展示を見て回るのは楽しい体験です.

また,上階に上るにつれて多彩な光の取り込み方をした空間が現れるのも期待感を高めてくれます.
とは言え,美術品を展示するため,開口部が覆われているところも多い印象でした.

建物の奥と手前の両側に設けられた階段室もなかなか面白い空間となっています.

最上階の展示室は大きな洞窟に光が落ちるような空間で,青い光に満たされた展示となっていました.



最上階の突き当たりにはライブラリースペースが設けられています.
こちらもハイサイドライトから天井を自然光が照らし,良い雰囲気です.


Kiasmaは荒っぽい造りの部分も多く見られます.
ハイクオリティという印象ではありませんが,あらゆる部分を面白く作ってやろうと言う意気込みが見られ,作ることの喜びに溢れたパワーのある建築でした.