北欧旅行記 Day5 (2/2)


Pori(ポリ)駅に到着し,駅前でタクシーを拾います.

ポリ駅からマイレア邸のあるNoormarkku(ノーマルック)までは車で20分ほど.
バスでも行けますが,見学の時間に間に合わないようだったので少し距離はありますがタクシーを利用することにしました.

ポリ駅の周りには大学や大きめのスーパーなどもあり,比較的栄えていそうですが,人は少なく閑散としていました.
しかし,駅前にはタクシーは頻繁に回ってくるようです.
タクシーを拾うのに苦労はしませんでした.

乗り込んだタクシーの運転手は30代くらいの女性の方ですが,英語は苦手と仰っていました.
ヘルシンキやトゥルクなどの大きな街の人は高齢の方を除けば,皆話せるようでしたので少し意外でした.
事前の調べでポリでは英語が話せない人が多く,バスに乗るのに苦戦したという情報があったので少し心配していましたが,確かにそうなのかもしれません.

駅近辺は郊外住宅地のような雰囲気でしたが出発するとすぐに栄えた市街地に入りました.
広場はマーケットで賑わっており,飲食店も多くあります.
市街地を通るコケマイン川沿いも穏やかで良い印象がありました.

市街地を抜けると定番の風景が続きます.
森と畑.

畑の所々に大きな岩がぽこっと浮かんでいるのをよく見かけます.

タクシーの運転手さんはたまにマイレア邸に向かう乗客がいると仰っていましたが,自身は中に入ったことはないとのこと.
建築設計業界では世界に知れ渡るマイレア邸も,一般の方からするとそんなものなのか…と少々拍子抜け.

しかし,暫く走って,幹線道路から下道に入ると,いよいよかと気持ちが高ぶります.

そして松林の奥,丘の上に“それ”が見えて身体に電撃が走りました.
ついに到着です.

Villa Mairea / Alvar Aalto

本物の名建築に出会えた感動.

それを簡単に言い表すことは出来ません.

建築を学ぶ中で幾度となく言及され,幾度となく紙面で目にしてきた“それ”にようやく出会えたのです.

トゥルクからの5時間以上の道のりなど微々たるもの.
建築を学んできた年月を加えた時間をかけてここに辿り着いた…
そういう感覚が湧き起こってきました.

建築そのものの力に加え,建築文化の積み重ね,
私自身の積み重ね,色んなものが合わさって大きな感動を与えてくるのだと思います.

内部の見学ツアーの開始前に少しだけ庭側を見学しておきました.
表からは分からないL字型のプランが外観からよく見てとれます.
建物と柔らかなシェイプのプールで緩く囲まれた,開放的なプライベート空間となっています.

集合時間になって,玄関前に戻り内部の見学に移りました.

見学費用は30€.インターネットで事前に予約します.
内部は撮影禁止.
現在も持ち主によって利用されている建物で,見学出来るのは1階のみ.
それでも建築が好きならば訪れる価値はあると思います.

内部はギャラリーのようなワンルーム空間で,ピカソやマティスといったアート作品が所狭しと飾られています.
建築も遊び心と工夫のあるディティールが満載で見応えがあります.
抑揚のある空間が連なり,窓から見える赤松の森と呼応するような内部空間.
オリジナルの状態を維持していて素晴らしいのですが,写真を撮れないのが歯痒い.笑

マイレア邸の写真集(AAL事務所にて)

マイレア邸は私にとっては謎多き建築でした.
写真や図面から部分の魅力は理解できても,建築空間全体の魅力をうまく捉えることが出来ていませんでした.

それは空間のスケール感を身体感覚的に掴めなかったことに由来する部分が大きく,その延長で抑揚のある空間の連なりがもたらす魅力を読み込むことが出来ていなかった為でした.
何となく間延びした印象さえ持っていて,どのように設計したのかイメージがまるで湧かない状態だったのです.

建築は実際に訪れてみないと分からないとよく言われます.
私にとって,それをとても実感することになった建築でした.

実際にその場に身を置いたことによって,空間のスケールを体験したことで,
自分の設計の拠り所となる感覚と結びつけることが出来たように思います.

謎多き豪邸だったマイレア邸が,心地よい住宅建築として実感でき,設計者として以前よりも身近に感じられるようになったのは大きな収穫でした.

マイレア邸内部の見学を終え,再び屋外空間の見学をしていましたが,帰りのバスの時間があっという間に近づいて来ました.
バス停までの距離を考える不味い.
バス停まで走ることに.

相方は体調を崩し気味でかなり辛そう.
パンパンに詰まったバックパックを相方の分持って一走り.

この日の宿はタンペレで取っています.
翌日にユバスキュラを目指す為,中間地点に宿を取って移動の負担を減らす作戦です.
その為,VRでの長距離移動を控えておりチケットを購入しているので間に合わせたい.


息が上がって,汗も滲みますが,無理を通してなんとかバス停に到着.

しかし,肝心のバスはなかなか来ません.

乗り場を間違えてないかと不安がよぎります.

そのタイミングでマイレア邸を一緒に見学していた別のグループの旅行者の車が目の前で止まり,
ヘルシンキまで行くならば乗せていくよと声をかけてくれました.
お誘いは嬉しかったものの,目的地が違う為,遠慮させて頂きました.
…車にそこまで空きがないように見えたけど荷物を抱えた私たちが乗るのは無理があるような.

定刻を過ぎてもバスが来ないので,バス停に来た別のバスの運転手に聞いてみたところ,遠くの一つ手前のバス停に見えるのがそうだと教えてくれました.
拙い英語で尋ねても,皆親切に教えてくれるので助かります.

高速バス

因みにバスのチケットは前日にインターネットで購入しました.
高速バスを運行するMatkahuolto社のWebsiteから購入できます.

日本の高速バスと違って普通のバス停にも止まります.
大型バスで運転手が乗り込む際に名簿を確認して中に促してくれる感じでした.
私たち以外の乗客はいなかったのでスムーズでした.

タクシーを使った往路は記憶が確かではないですが,45€くらいだったでしょうか.
バスだと1人5.5€,2人で11€でした.
タクシーならば融通も効いて安心ですが,可能であればバスを利用したいところです.

無事ポリ駅に到着し,最寄りのスーパーで水分やお菓子を補給.
VRに乗り込んでポリを後にしました.

タンペレ駅前

タンペレは工業,IT産業で栄えた街ということで他の街よりも現代的な雰囲気がありました.
滞在時間は夕方から翌朝までと短くなって,ムーミン博物館やカレヴァ教会など覗いてみたい気持ちもありましたが,到着時点で閉館しており訪れることは出来ませんでした.

取り敢えず,駅前のホテルにチェックイン.
またまたScandicですが,なかなか悪くないインテリアコーディネート.

既に広角レンズを出す気力が無い

観光スポットは閉まっていますが,まだまだ外は明るいので街を散歩することにします.
疲れて歩くのは億劫になっていますが,ここでも電動キックボードが活躍しました.

駅前から離れ,赤煉瓦の古い工場が迫力のある景観を作るタンメルコスキ川の方まで行ってみました.
街中でパッと視界が開け,レンガ造の旧工場エリアが現れるのはなかなか見応えがあります.


こういうちょっとした散策が,徒歩だと辛くて出来なかったり範囲が限られてしまったりするものですが,電動キックボードに乗るとぐるっと見て回れて,街の空気を感じられるので充実感が全然違います.


水際に降りる道があったので下ってみました.
高低差のある街歩きでも電動キックボードなら疲れ知らず.
新しい建物も色味を合わせているのが見て取れます.
景観への配慮が好印象でした.

街中の川ですが釣りをしている人がちらほら.
しかし,歩行者がいる中でバックキャストのあるフライフィッシングとは…
こっちの人は慣れているのかもしれませんが,後ろを通るのが少し怖かった.笑


くるっと周っただけですが,想像以上に街の雰囲気を感じられて満足できた為,
適当なイタリアンのお店に入り,夕食を取って1日を終えました.

タンペレはなかなか良さそうな街だったので機会があればまた訪れたいですね.