北欧旅行記 Day6 (2/2)

6日目の宿へのチェックインは17時まで.
それ以降は施錠され,常駐するスタッフはいません.
ホテルでは無く役場での宿泊なので仕方がないですね.

後ろ髪を引かれつつも実験住宅を後にします.

バス停に向かいました.
バスは1時間に一本.

ギリギリなので逃すわけにはいきません.

しかし,時間になってもバスが来ない.

5分が過ぎ,10分が過ぎ,20分が過ぎ…

バス停とカフェ

バス停側のカフェの店員がテラスに出てきたので声をかけます.
「遅れてるようだけど,原因は分からないね.でも,待っていれば来ると思う.」
そういう感覚なのかと理解して,他に足もないのでただただ待ちます.

そして30分が経過した頃にようやくバスがやって来ました.

 

バスに乗り込み,役場に電話をかけて到着が遅れることを伝えました.
スタッフが役場を閉めるのを待っていてくれることになり,事なきを得ました.

バスは走り出しましたが何やら様子がおかしい.
ドアの開閉が自動で出来ない?バス停に停まる度に運転手が外に出ていきます.

結局,後のバスに追いつかれ,そちらに乗り換えるように促されました.
どうやら故障が遅延の原因のようでした.

車窓から見える水辺の風景

トラブルもありましたがセイナッツアロ村役場に到着.
部屋や設備の説明を受けて,鍵を無事に受け取ることが出来ました.
1時間近く遅れての到着でしたが快く対応頂き感謝.

村役場には,アアルト夫妻が宿泊する為に設けられた小さなゲストルーム2室の他,アパートメントの広い部屋が2室ほど宿泊用に用意されています.
狭くてもアルヴァ・アアルトやエリッサ(アアルト2番目の妻)が実際に利用していた部屋に泊まりたいと考えていました.

ゲストルーム“エリッサ”

ゲストルームはどちらも1人部屋ですが,エリッサの部屋の方が僅かに広く簡易ベッドの追加が可能となっています.
メインのベッドはアアルトデザインのしっかりしたものですが,
簡易ベッドは幅60cmほどのコシのない折り畳みマットです.

私は簡易ベッドでも問題なく寝れました.
学生時代に製図室やら研究室で寝泊まりしていた建築学科出身の諸氏には簡単なことでしょう.
※睡眠環境に拘りの強い方は要注意

部屋は中庭に面しています.
ツタが窓を覆っており視線を切るスクリーンとなっていました.

アルヴァとエリッサの部屋の間には2室兼用の洗面室兼シャワールーム,WCが設けられています.
どちらも最小限の設備で簡素に作ってあります.
シャワーを使うと洗面はびしょ濡れ.不便が無いとは言えません.
しかし,その不便も高級住宅を多く手掛けたアアルトも,場合によってはここまで割り切るんだなと実感が湧いて楽しい経験となりました.
デザインにおいては,足し算よりも引き算の方が重要な発想になることが多い為,何を作らなかったかに注目するのも面白いものです.

奥のツタに覆われた部分にゲストルームが隠れている

この頃,相方は体調不良で辛そうでした.
アアルト建築を体験する喜びでアドレナリンが出ているのか持ち堪えていましたが,旅の疲れに加えて,想定以上の寒暖差に対応出来てない様子.
持って来た服が悪かったかな…
今後,始めて北欧を旅するという方には,登山の服装のように合理的な着重ねで調節することを強くお勧めしたいです.
ガイドブックなどにはカーディガンを勧められていたりしますが,個人的には防風性能が無いので不十分だと思います.

晩ご飯も外で食べる事はやめにして,朝食用に買ったデリやパンで簡単に済ませることに.
私は1人で役場の外を軽く散歩して回ることにしました.

17:00以降は役場側は施錠されており,外出は裏口から.

出口の側に宿泊者が利用できるサウナもありました.
さすがフィンランド.


西陽で木々の影が長く伸びて役場の壁が影絵劇のスクリーンの様.

いつまでも沈まない太陽.
長い夕暮れで終える1日にもこの頃には慣れてきました.

ユバスキュラの森と調和するアアルト建築を満喫し,アアルト建築と共にある6日目最後の光景を胸に刻みます.
名建築の中で眠るというのは,なんだかドキドキする経験でした.